歯科口腔外科領域においてX線CTが利用されるようになったのはこの数年である。 いうまでもなくX線CTは身体の内部構造を三次元的に観察できることから、歯科インプラントのように微妙な骨幅や骨の密度、深さなどの要件を正確に探り出し、もっとも適応するインプラントの設計を考える上では大変便利な診断機器といえる。 フィンランドでは、パノラマ型のX線装置でそのコンピュータデータから通常のX線CT画像を得ることのできる、いわばデンタルCTともいえるコンパクトなタイプのものが開発されすでに市販されている。
これからの歯科臨床ではX線CTがルーチンな検査法となることも予測される。 X線CT-CAD/CAM systemはこれらX線CTにより撮影されたデータフロッピーから読み取り、骨や軟組織等それぞれ撮りたいX線吸収濃度を選択し、その設定した条件から組織、器官の生体のライフサイズの複製模型をCAD(コンピュータ支援デザインシステム)とCAM(コンピューター支援マニファクチャリングシステム)を連動し製作する一連のシステムをいう(図2)。
この技術は一般工業界では、すでに工業機械のデザインや自動車などの実験モデルを作る技術として一般的である。生体モデルの場合は0.1mm単位の精度が要求され、さらに非常に複雑な内部構造や切削ミーリングマシーンが開発、実用化されて現在臨床に使用されている。このシステムにより作られた生体ライフサイズモデルは今後の医療全般に果す役割は果てしなく大きい。 一般外科の分野では、例えば骨折などの場合でも、骨折片の形状が明瞭であり固定板やスクリューの選択は容易である。また骨の腫瘍等により大きな摘出手術を行う場合、移植骨やインプラントの術前準備は完璧であり手術の時間的節約、完全なリハビリテーションへの形態的な満足も得やすい。
口腔インプラントにおいては、リアルサイズの患者さん自身の顎骨を前にして治療の計画を立てることで、正しいインプラントの選択、事前に下顎管、上顎洞の位置も確認でき、より確実な手術を行うことが出来る。モデル上に植立用ガイドを作れば確実な骨内の切削も行われる。咬合器に付着すると咬合関係の回復も模型上で術前にシュミレートできるので、審美的な補綴物の製作にも予測が可能であり、患者さんにも術前にある程度の補綴物形態を見せ、より理解を得られやすい。骨膜下インプラントのような広範囲な手術野を開く、患者さんの全身状態にも大きな影響を与える手術もスムーズに行われる。 |